7/14(土)、7月例会が開催されました。台風が近づいていたにもかかわらず、院生も学部生もある程度参加してくれたようです。
まずは露払い、私の報告で「礼拝威力、自然造仏—『三宝絵』下巻二十話にみる〈祟る樹霊〉の解脱—」。平安期の仏教説話集『三宝絵』をめぐる、成城大学民俗学研究所での共同研究から生まれた発表です。寺院縁起としてしか扱われてこなかった長谷観音の造立譚を、樹霊婚姻・神身離脱という別の言説形式から捉え直し、中国の古小説や仏典、朝鮮の野談などに先行モチーフを求めました。大澤先生や山内先生から質問・意見をいただき、「引く」という行為の儀礼性、中国江南地方と日本の宗教文化との関係、縁起にみえる五行的要素など、重要な問題を再確認することができました。
続いて本命、博士課程の中野純氏による「十七世紀前半の「外交文書」の変遷について」。これまで華夷秩序的な思想面、あるいは幕府による外交の独占という枠組みで語られてきた鎖国について、外交文書を検討しながら、利害調整を基調とする幕府組織の志向性によって、場当たり的な対処を積み重ねた結果であると新見解を提示しました。また家康は、自国より小さな国々に対しても対等貿易を保持し、拡大意識を持たなかったとか。史料を地道に読むことで研究史の思い込みを覆した好論でした。
なお、今回は自分の報告の準備で手一杯であったため、あろうことかスナップ撮影を忘れてしまいました。申し訳ありません。