質疑応答では、山手氏の扱った地域社会の特性、構造や、煽動者のありようなどについて活発な意見交換がなされました。
現行のカトリック教団の問題も含め、宗教と教団、教団と社会・政治の間に介在する難問をさまざまに考えさせる報告でした。
上智史学会では、4月の新入生学術講演会から始まり、5〜10月の例会、11月の大会と、学術研究の報告の場を設けています。ここでは、発表と討論の風景をブログ風にまとめています。

4月18日、新入生歓迎の意味を込めて、昨年サバティカルで研究に専念されていた児嶋由枝氏により、「ロマネスク美術に見る「マギの礼拝」と神聖ローマ皇帝権」と題した講演が行われました。マギとは、イエスの生誕の際に星に導かれてベツ レヘムに至り、イエスに黄金、乳香、没薬、贈り物を捧げた三人の祭司、もしくは王、あるいは東方の博士のこと。講演では、彼らに対する崇敬が、12世紀にシュタンフェン朝の神聖ローマ皇帝権と結びついていく状況をたどるとともに、同時期の「マギの礼拝」図像の展開との関係について美術史学的立場から考察 を加えたものでした。神聖ローマの皇帝権と密接な関係にある3つの聖櫃(三王の聖櫃、聖母マリアの聖櫃、カール大帝の聖櫃)など、多くの貴重な図像がスライドで紹介され、新入生も興味深げに聞き入っていました。