GWも明けて春学期も本格的に始動してきた5月16日、5月例会が開催されました。報告は、大学院博士後期課程の山手昌樹氏による「日常的実践としてのストライキ―民衆的非ファシズム論によせて―」、大学院OBでもある法政大学兼任講師、尾崎修治氏による「世紀転換期ドイツ・カトリック国民協会の労働者教育―ある「赤い」司祭の日記から―」です。
山手氏の報告は、ファシズム体制が国民の支持を得ていた「合意の時代」のイタリアにおいて、日常的に発生していたストライキや騒擾行動に注目します。従来、これらの集団行動は第2次大戦下の反ファシズム運動に発展したと考えられていたが、そうした見解の主要な典拠である共産党機関誌だけでなく、内務省公安本部文書などを併せて分析してゆくと、民衆が政治的無関心と現実主義をもって、非イデオロギー的に活動していたことがみえてくる。ファシズム時代以前の労働運動のなかで培われた行動様式としてのストが、非合法化後も民衆が実践しうる選択肢であり続け、農業経営者に対する抗議の意思表示として一定の効果を持ち、体制が救済事業を展開する契機となったという点こそ重視すべきであると結びました。
質疑応答では、山手氏の扱った地域社会の特性、構造や、煽動者のありようなどについて活発な意見交換がなされました。
尾崎氏の報告は、19世紀末〜20世紀初め、社会主義系の思想・活動に対するカトリック側の防波堤として組織された、国民協会の展開と末路を扱ったものです。同協会の本部はカトリックのなかでも社会派の聖職者によって占められ、小教区の司祭たちを末端の担い手に、労働者と有産者の融和を説いてゆく。しかし、労働者と積極的に関わってその利害を代弁し、支援する組織としての正確を強めていった協会は、カトリック保守派との間に少なからぬ軋轢を生じてしまう。協会は、特定の社会層への肩入れ、教会制度や司教権からの半独立的なありようが保守派に不信感を与え、カトリックの統一性を危地に陥れるものとして攻撃されることになるのである。
現行のカトリック教団の問題も含め、宗教と教団、教団と社会・政治の間に介在する難問をさまざまに考えさせる報告でした。
2009/05/20
2009/05/17
2009年度 新入生歓迎学術講演会、開催!
4月18日、新入生歓迎の意味を込めて、昨年サバティカルで研究に専念されていた児嶋由枝氏により、「ロマネスク美術に見る「マギの礼拝」と神聖ローマ皇帝権」と題した講演が行われました。マギとは、イエスの生誕の際に星に導かれてベツ レヘムに至り、イエスに黄金、乳香、没薬、贈り物を捧げた三人の祭司、もしくは王、あるいは東方の博士のこと。講演では、彼らに対する崇敬が、12世紀にシュタンフェン朝の神聖ローマ皇帝権と結びついていく状況をたどるとともに、同時期の「マギの礼拝」図像の展開との関係について美術史学的立場から考察 を加えたものでした。神聖ローマの皇帝権と密接な関係にある3つの聖櫃(三王の聖櫃、聖母マリアの聖櫃、カール大帝の聖櫃)など、多くの貴重な図像がスライドで紹介され、新入生も興味深げに聞き入っていました。
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