2012/04/15

2012年度史学科新入生歓迎学術講演会開催


414日(土)、史学科・上智大学史学会合同開催、史学科新入生歓迎学術講演会並びに懇親会が行われました。学術講演会講演者は、本年度より本学で教鞭をとられる長井伸仁准教授。講演タイトルは「個人の史料からみる歴史―近代フランスの場合―」。長井先生の研究を紹介されると同時に、これから歴史学を学ぼうとしている新入生に歴史学の方法論も紹介される興味深い内容でした。講演の内容は以下の通りです。

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「私たちが歴史的な存在となった時、何が私たちのことを証明するのか?」という問いかけとともに講演がはじまった。「任意のだれかの歴史をどのように知るのか?」「何を史料にするのか?」「史料をどのように用いて研究するのか?」と立て続けに質問を投げかけながら、新入生は初めて経験する学術講演に惹き込まれていく。実際に長井先生が研究された19世紀末フランスの戸籍簿(民事籍簿)を、史料として読む時間が与えられる。新入生にとって初めての歴史学研究の疑似体験。19世紀末フランスに生きたエチエンヌ・ペリションなる無名の人物の記録は、一読しただけでは何の面白味もない史料だ。しかし長井先生の解説とと
もに、史料から様々な情報を読み取ることができることを学ぶ。19世紀フランスの婚姻の習慣、署名から分析される識字率、人々の移動、社会的上昇などなど。貧しい石工であったエチエンヌ・ペリシャンが、1899年には莫大な資産を残してパリで死んだことを「相続申告記録」から読みとった時、会場の新入生に知的な興奮が広がった。

 講演はさらに、政治家や軍人、もしくは抽象的な社会集団(貴族、農民など)の研究ではない、このような「名もなき人々」の一人一人に光を当てる研究の研究史解説へとつながる。世界大戦後に、人口問題を研究する必要があったフランスにおいて偶然に「家族史」の研究が誕生した。そこから「家族」の問い直しが行われ、乳児死亡率や結婚年齢、出産と産児制限の関係、家族の形態の実情など新たな事実がわかってきたことが紹介される。さらにそうした研究から、ステレオタイプに研究されてきた社会集団の歴史に対する問い直しも必要となることが説明される。講演の最後は、このような「個人の史料からみる歴史」を「大きな歴史(政治史など)」にどのようにつなげていくかが今後の課題であると結ばれた。

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 新入生にとって、歴史学を概観するとともに、歴史学そのものを体験することができる講演であったので、非常にたくさんの刺激を受けたことでしょう。これから始まる学業の生活に大いに活かされることを願います。

 講演会の後、恒例の懇親会が学生食堂にて行われました。