次第に蒸し暑くなってきた梅雨まっただ中の6月28日(土)、7号館12階第2会議室にて、上智史学会・紀尾井史学会合同の月例会が開催されました。報告は、ともに本学大学院博士後期課程の今泉牧子氏と松尾里子氏。女性研究者の底力を見せつける報告となりました。
まずは今泉氏の報告、「挙留と地方官—宋代地方社会の実態—」から。民が地方官の再任を要求する〈挙留〉という制度に注目し、宋代地方行政を支える地域社会の実態をみすえようとしたもの。昨年度の大会で一度発表された内容ですが、本年刊行予定の『上智史学』53号投稿を機に、あらためて批判や助言を得よう挑戦したとのことでした。当たり前のことに価値を見出す姿勢、日常性に対するアプローチは大澤先生譲り。堅実な史料分析と立論に、西洋史・日本史の側からも多くの質問が出て、それぞれの地方行政と地方社会の関わり、中央/地方を結ぶ人的ネットワークのありようなど、比較考察の議論に花が咲きました。
続いて松尾氏の報告、「17世紀フランスにおける女子教育—マントノン夫人の女子教育を一例として—」。ルイ14世との秘密結婚の相手でもあるマントノン夫人が、自ら創設したサン=シール女子学院において、キリスト教的保守教育に対しいかなる新たな試みを行ったか。その意図と顛末について、当時の社会情勢などとの関わりから通史的に整理する内容でした。マントノン夫人自身の詳細な教育論、修道院的教育への意識、学院経営の画期における述懐を記した史料が乏しいため、「個を掘り下げる」深度について質疑応答がなされました。思想史・社会史の方法論においてはもちろん、大学人としての私たち自身を振り返るうえでも大変意義のある発表でした。
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