○第1部会(日本史):共用室A
・岩井優多 氏(上智大学大学院)
「日本古代における治水の認識―「治水英雄」創出への過程―」
・山内保憲 氏(上智大学大学院)
「キリシタン時代のコングレガシオ・デ・マリアーナ
―慶長九年九月二十七日付セミナリヨの生徒による書簡を手がかりに―」
・浅野友輔 氏(上智大学大学院)
「永禄年間室町将軍足利義輝の和平調停とその影響範囲
―毛利家・国衆動向からの検討―」
・中野純 氏(上智大学大学院)
「「高札場」の成立について」
・稲垣政志 氏(上智大学大学院)
「陸軍省による関東軍統制について
○第2部会(東洋史):共用室D
・ 天野怜 氏(上智大学大学院)
「孫文の清朝領域観」
・望月美咲 氏(東京大学大学院)
・望月美咲 氏(東京大学大学院)
「科挙廃止の最終段階を見る―「逓減」から「立停」へ―」
・松浦晶子 氏(上智大学大学院)
「雅楽の破壊と再生」
・宮古文尋 氏(上智大学大学院)
「雅楽の破壊と再生」
・宮古文尋 氏(上智大学大学院)
「戊戌変法と張之洞」
・中島良江 氏(上智大学大学院)
・中島良江 氏(上智大学大学院)
「清代の画院と御容」
○第3部会(西洋史):共用室C
・ 齋藤貴弘 氏(上智大学史学会会員)
「聖オリーブ樹に関する法(AP.60.2)の変遷をめぐって」
・藤澤綾乃氏(上智大学大学院)
「港湾都市オスティアのディアスポラ・ユダヤ人」
・加賀野井瞳 氏(上智大学大学院)
「世紀の大馬術師―ジャック・ド・ソレイゼル『le parfait mareschai』と馬学興隆」
・山手昌樹 氏(上智大学特別研究員)
講演会は二部構成となっていた。第一部では、中国に対する熱い思い入れと期待に突き動かされてきた若き日の研究に対する「痛恨の回顧」が語られた。1960年代の研究界では、マルクスの「世界史の基本法則」を中国に当てはめ、資本主義社会が社会・共産主義社会へ進化するとの前提条件のもと研究を進める事が常道となっていた。氏はこの流れに疑問を感じつつも、帝国主義によって破壊・抑圧された社会経済が、民衆の闘争によって立て直され、その結晶として1920年代の国民革命、1949年の共産革命が位置付けられると信じ研究に打ち込んだ。しかし、文化大革命と天安門事件を目の当たりにして氏は大きな衝撃を受ける。自らの研究は中共と人民共和国の価値観に基づく神話と史実が入り混じった歴史をなぞるものでしかなかった事に気付かされたからだ。
第二部では、その後の研究テーマを紹介しつつ、40年にわたる研究生活の中で得られたものについて語られた。過去への反省として学生との関わりを深めるかたわら、氏の視点は中国における自国史叙述とその問題点に向けられていく。氏は中国近代を「リセット」の繰り返しととらえる。つまり国共合作、15年戦争、人民共和国成立と毛沢東時代、改革開放と鄧小平時代等の節目毎に、絶えず中国の「自画像」は書き換られ転変を遂げてきたのである。そして近年のリセットにより中国の自画像は毛沢東礼賛の記述の中で描かれているとする。例えば「『歴史』の中の毛沢東」(『上智史学』第53号、2009年)では、共産党政権の中で語り継がれるカリスマ的指導者としての毛沢東イメージの構築過程を分析し、正史以来の「勝った者が歴史を定める」範囲を脱していない現人民共和国の現状を浮き彫りにした。ゆえに現在の関心は「個我の欲求」といかに向き合い自制してゆくか、つまり、「近現代中国像の虚と実」に対していかに冷静な視点を向けられるかにあると締めくくった。
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