2008/06/05

2008年度5月例会開催!

去る5月31日(土)、7号館12階第2会議室にて、上智史学会・紀尾井史学会合同の5月例会が開催されました。報告は大澤正昭先生に、院生の宮古文尋氏。お二人とも中国史がご専門なので、今回は「東洋史特集」といった趣。天気はあいにくの雨でしたが、教員・院生合わせ20名余りが集まりました。

まずは大澤先生のご報告、「『袁氏世界範』の世界—危機の中の日常—」。『歴史家の散歩道』でも取り上げられた史料ですが、研究史的にも部分的にしか引用・分析されてこなかったその全体像を、各章節の概観を通じて位置づけ直そうとする内容でした。質疑応答は宋代の家族制度、宗族秩序の形成にまで及び、活発な意見交換が行われました。当然のことではありますが、私たち現代人にも感覚的に理解できる項目、言明があると同時に、「やはり家や家族、それぞれに伴う感覚や情念も歴史的存在なのだ」と痛感するところが多々ありました。最も自明なようでありそうではない問題群...〈日常性〉の歴史学とは、だからこそ大切な視点なのでしょう。

続いて、宮古文尋氏の「連露派の虚像と戊戌政変」。戊戌政変前後における清朝政府内の諸派閥について、従来の研究の二項対立的に固定された枠組みを再検討し、二つの派閥が政治状況の変化に伴いひとつの政策へ収斂してゆく様子を動態的に描き出す内容でした。指導教授の坂野先生から詳細な批評・解説がありましたが、既存の理論的枠組みを史料の読み込みから実証的に問い直してゆく姿勢は、後輩の模範となる優れたものと思いました。