2010/04/19

2010年度 新入生歓迎学術講演会、開催!

4月17日(土)、今年度最初の例会が、新入生歓迎学術講演会として開催されました。講演者は、昨年サバティカルをとられ、韓国やアメリカで研究を続けられていた長田彰文教授。講演タイトル、および要旨は以下のとおりです。
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「ニューヨークにおける日本人移民と日米関係」
 在米日系人移民については、中国人移民に代わるブルーカラー労働力として移民が開始されて以来、日米関係の悪化に伴う排斥、資産没収や強制収容所への連行といった辛苦の歴史が知られる。しかし、それらはほとんど西海岸の場合であり、合衆国の〈中心〉である東海岸の日系人には当てはまらない。永住性が高かった西海岸の移民に対し、東海岸では留学から貿易に従事する日本人が多かった。会社「佐藤新井組」を創業して生糸貿易に従事した佐藤百太郎や新井領一郎が有名だが、そのほかにもアドレナリンを結晶化させるのに成功し、理科学研究所の創設にも関わった高峰譲吉、ロックフェラー研究所で黄熱病の研究に従事した野口英世、日本人共済会を創設した高見豊彦ら、著名な医師や科学者もいた。ニューヨーク自体が宗教・人種のるつぼ(あるいは、中のものがそれぞれの形を維持しつつ全体の調和を保っている、〈サラダ・ボール〉の方が正確な表現か)であったためか、日米開戦後も目立たない日本人が攻撃対象になることはなく、西海岸のように資産の没収や活動が拘束を受けることもなかった。現在も6万人ほどの日本人がニューヨークに在住しているが、その数は減少傾向にあり、かつてブルックリンにあった日本人街・日本人村のようなものは今はない。
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 写真のとおり、新入生たちも真剣な眼差しで耳を傾けていました。また、今年度のヘルパーである長田ゼミ3年 柴崎晶宏君が、下記のような感想を寄せてくれました(ありがとうございます)。
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 海外在留邦人の数は、ここ何10年の国際化の影響を受け、現在では100万人近くにのぼるといわれています。米国の都市別で見るとニューヨー クは不動の人気を誇るようです。しかし今から遡ること150年、ニュー ヨークにおける日本人の数が約30人であったという事実には誰もが耳を疑うでしょう。
 長田教授の講義は日本史学習者でも、そうでない人にとっても大変興味深いものでした。写真結婚がかつて存在したことを移民史の中に織り交ぜ、私たちが耳にしたことのあるビッグネームを紹介。さらに太平洋戦争時に日本人はなぜ資産や不動産を没収されず拘束もされずに済んだのかという歴史学習者が疑問を抱く問いへの答 え。写真結婚は、写真を見ただけで伴侶が決まる、現代の感覚ではライト版お見合いといった感じなのでしょうか。
 この講義を聞いたほとんどの人が「お金がなければやっていけない」、MeltingPot ニューヨークを訪れてみたくなったのは確かだと思います。
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講演会終了後は、これまた恒例の新入生歓迎会懇親会。坂野先生による乾杯の音頭で始まりました。今年の1年生は「おとなしい」印象があったのですが、なかなかどうして豪快な食べっぷり。「自分の分を取ったら後ろへ下がるのがマナーです」との井上先生の訓辞も空しく、テーブルへ群がり続ける若者たちの姿がそこかしこでみられました。毎年、GWを過ぎると心の不調を訴える学生たちも出てくるのですが、この元気をずっと持続していってもらいたいと願うばかりです。